母の日、
戦だったな、とおもう
それも初夏の陽気だったしね
お金をぎゅうっと握りしめて、ひとりでやって来たちいちゃいおとこのこがいたり、
俺のおかんめちゃうざいねん、とか言いながらもいろいろ買う言い訳を作って、カーネーション一本、照れながら持ち帰ったヤンキーなおとこのこがいたり、
ピザ屋の宅配バイトしてるんっす、いま休憩中なんっす、と休憩時間のほとんどを使ってお花を選ぶおとこのこがいたり、
僕の嫁さんすてきなんですよ、とベビーカーを押しながら奥さん自慢を聞かされたりもしたな
たくさんありがとうを言ったり言われたりした
ちいちゃいおとこのこが、お小遣いがんばって貯めたんだろうな、て感じでくるのに毎回涙がちょちょぎれながら、おかあさんきっと喜ぶで、と言ったらにっこり嬉しそうだったりした
いちばん安い一本巻きのカーネーションが300円に消費税で324円で、けど290円しか持ってなくて泣きそうになった子がいたりもしたけど、こっちのラッピングしてないカーネーションなら250円に消費税で270円だからこっちにしよっか、と言って、どうにかそれをかわいく包んであげたときの嬉しそうな顔なんて最高だったな
(消費税なんてなくなればいいと本気でおもった)
ヤンキーなおとこのこは、なんて言っておかあさんに渡したんだろな
そうっとわかる場所にでも置いといたりしたのかな
ピザ屋さんの男の子は、枯れると悲しい、と言い、じゃあ育てるやつにしましょうか、と鉢に入ったバラを選んで、おかん枯らしてまうんちゃうかな、と笑って言ってたけど、おかあさんはすうごく大切に育てるだろうおもう
みんな、誰かを思いやってるんだなって当たり前のことに気付かされる日だった
そんな当たり前のことにすら、気付けていなかったんだということ
仕事が終わって花屋を出る
いつもの踏切、タバコ屋の道、小さい橋、神社のある通りを抜ける
ケーキ屋さんへ行くために、いつもの帰り道とは違う角を曲がる
プレゼントだろうな、とおもう紙袋を持ったひととたくさんすれ違う
やっぱりみんなちょっと誇らしげだ
身近なひとに感謝のきもちを伝えるのはむつかしい
こんな日にしか言えないなとおもう
ケーキ屋さんを出て家に帰る道を走る
おかあさん、いつもありがとう、と言うために
自転車のカゴにはいったケーキを、できるだけ揺らさないようにでこぼこの道をゆっくり、だけど浮かれ気分で走る
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